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図1:原発性アルドステロン症における
PA/PRA比 一方、IHAでは副腎肥大の判定が微妙であり、現在のところ本症のスクリーニングについては、血漿Ald値(PAC; ng/dl)と血漿レニン活性(PRA; ng/ml/h)の比が25~30以上をもって異常と考え(図1)、フロセマイド負荷後立位負荷検査、生理的食塩水負荷試験等の精密検査を行うのが最も良いとする意見が多い。 しかし、Kaplan, Nはその著書であるKaplan’s Clinical Hypertension(8th Edition2, 2002)の中で、The Aldosterone renin ratio (ARR) is not a suitable test because it primarily reflects a low level of plasma renin activity (PRA). The ARR became popular because it is so simple, but blind use of the ARR can be misleading. Rather than using a potentially misleading ratio, clinicians should simply look at the plasma aldosterone and PRA levels: If the plasma aldosterone is high and the PRA suppressed, the patient should be further evaluated for primary aldosteronism. と述べており、PACと血漿レニン活性の比だけに頼ったスクリーニングに警鐘を鳴らしている。また、たとえ内分泌学的に原発性Ald症が考えられても、画像診断で病変部位が判然としない時は、左右副腎静脈採血によるPAC測定が必要で、同時にコルチゾール(F)を測定して、副腎静脈へのカテーテル挿入が確実であったことを確認しなければならず、特に右副腎静脈は大静脈に直接流入するため、カテーテル挿入とそこからの採血には、技術的熟練さが要求される。 しかし、実際の臨床において、高血圧患者が全く未治療で受診した場合はともかく、既に降圧剤が投与されており、かつ、利尿剤、βブロッカー、ACE阻害剤、アンギオテンシン受容体拮抗剤等は、レニンーアンギオテンシンーアルドステロン系(RAA系)に影響を与えるため、原発性Ald症でのRAA系の異常なのか、これら薬剤のための異常なのかの鑑別がしづらいことが多い。また、これら薬剤は短期間の投与中断では、そのRAA系に及ぼす影響は完全になくなるとはいえず、その間、RAA系の検査をするため、薬剤中断のまま高血圧を静観してよいか否かの判断に迷うこともしばしばある。 IHAはその病因が依然不明であるが、低カリウム血症の程度、レニン抑制の程度もAPAより軽度であることが多い。従って、前述の立位負荷試験では、レニンが反応して増加を示すものもある。APAとの大きな違いは、APAのPACがACTH依存性に朝高値で夜低値の日内変動を示すが、IHAでは日内変動を示さないことである。IHAの治療は鉱質コルチコイド受容体拮抗剤のスピロノラクトンによるが、カルシウムチャンネルブロッカーを追加する必要のある場合も多い。低カリウム血症が残存する場合はカリウム製剤の補充を行う。 GRAについてはLiftonらによりAld合成酵素遺伝子(CYP11B2)と11β水酸化酵素遺伝子(CYP11B1)との間の不均等交叉による遺伝子異常が原因であると究明され、N端部分がACTHの刺激に反応し、生じているキメラ遺伝子がこのACTHの刺激に反応してAld合成を促進することにより生ずる、極めて稀な疾患である。理論上、デキサメサゾン等の糖質コルチコイドの投与でACTHを抑制することによって、Aldの過剰産生は抑制されるが、必ずしも血圧のコントロールが順調にできるわけではないとされる。図2:Renography in a 42 Year-Old Man with RVH due to Stenosis of The Left Renal Artery
図3:線維筋性異形成による腎血管性高血圧症のMD-CT像
図4:Apparent mineralocorticoid excess (AME)の病体生理
(AME)の病体生理 甘草は種々の食品の甘味料として大量に使用され、甘草の主成分のグリチルリチン酸(glycyrrhizic acid; GA)は肝疾患、アレルギー疾患治療薬として頻用される。1968年GA投与により、原発性Ald症類似の低K血症と高血圧が出現することがConnらによってlicorice-induced pseudoaldosteronismとして報告された。本症では、PRAは抑制され、PACも低値である。一方、全くこれと同様の症状をきたす先天性の遺伝子異常症にapparent mineralocorticoid excess syndrome (AME症候群)がある。Aldは細胞内のMC受容体(type 1)に結合してMC作用を発揮するが、この受容体はFとも同等の親和性を示す。AldとFの血中濃度比は1:1000程度とFが遥かに高濃度を示す。しかし、Aldが作用する部位にはFを不活性のコルチゾン(E)に変換する11β水酸化ステロイド脱水素酵素(HSD11B2)が存在し、FをEに変換している。すなわちHSD11B2は生体内で遥かに高濃度に存在するFを非活性化することにより、Aldがその標的臓器で選択的にMC受容体に結合できるようプロテクトする役割をしている。AME症候群ではHSD11B2遺伝子の異常によりFのEへの変換ができず大量のFがMC受容体に結合してMCとして働く(図4)。GAはHSD11B2を競合的に抑制する他、HSD11B2のmRNAの転写以前の段階で合成そのものを抑制するとの報告もあり、AME症候群と同様の症状を惹起する。図5:Liddle症候群における病態生理
図6:Liddle症候群、偽性低アルドステロン症(I型)における遺伝子以上部位
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