脳神経外科部長 兼 脳卒中部門長 澤田元史
日本人の死亡原因の中でも上位を占める「脳梗塞」。
発症の原因はさまざまですが、近年の食生活の欧米化や高齢化に伴って、「頸動脈狭窄症(けいどうみゃくきょうさくしょう)」が原因で脳梗塞を起こすケースが急速に増えています。では、頸動脈狭窄症とはどんな病気で、どんな治療法があるのでしょうか。当院澤田元史医師に聞きました。
脳梗塞の引き金となる「頸動脈狭窄症」とは?
頸動脈は、脳へ血管を送りこむ、左右2本の太い血管です。この頸動脈に動脈硬化が発生し、血管の通り道が狭くなってしまう病気が「頸動脈狭窄症」です。放置しておくと、脳に送られる血液が足りなくなるだけでなく、狭くなった部分にコレステロールや血栓のゴミ(プラーク)ができ、それらが脳の血管に飛んで脳梗塞を引き起こすことがあります。いったん脳梗塞にかかると、さまざまな後遺症が残ったり、車いすや寝たきりの生活を余儀なくされる場合も少なくありません。この頸動脈狭窄症をしっかり治療すれば、脳梗塞を起こした人は再発予防に、まだ起こしてない人は脳梗塞の発症予防ができます。
頸動脈狭窄症の治療には2つの選択肢があります。
脳梗塞予防を目的とした頸動脈狭窄症の治療法には、「頸動脈内膜剥離術(けいどうみゃくないまくはくりじゅつ)」と「頸動脈ステント留置術」の2つの方法があります。どちらも有効で、比較的安全な手術ですが、当院では患者さんの状態にあわせて、ベストな治療法を選択しています。
頸動脈内膜剥離術
全身麻酔で首筋を約10cm切開して頸動脈を露出し、頸動脈の中にたまったプラークを内膜とともに取り除きます。取り除いた後は血管を元通りに再縫合します。これで血管がきれいに広がります。
頸動脈ステント留置術
足の付け根の血管からカテーテルを入れ、ステント(金属の網状の筒)を頸動脈に送り込み、動脈硬化を起こしている場所でステントに付いている風船を膨らませ、細くなっている血管を押し広げます。原則的に局所麻酔で行います。
頸動脈狭窄の有無は、エコー検査ですぐにわかります。
首筋にエコーをあてるとモニターに血管の状態が映し出され、10分ほどの検査で狭窄の有無や状態を詳しく調べることができます。痛みもなく、造影剤も使わない、体にやさしい検査です。
脳梗塞を未然に防ぐためにも、エコー検査を受けましょう。
高血圧や脂質異常症、糖尿病など、動脈硬化の危険因子を持っていらっしゃる方は、自覚症状がなくとも、定期的にエコー検査を受けることをおすすめします。