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内科:山北 宜由

家庭血圧測定について

血圧測定というと、かつては病院や診療所で、医師や看護師が聴診器を聴きながら、水銀柱を見て測定するものと考えられていましたが、現在では、極めて簡便な自動血圧計が開発され各社から発売されています。種々の血圧計がありますが、現在日本には約3000万台の家庭血圧測定装置があり、更に、年間500万台づつ増えているともいわれています。従って、高血圧患者さんも、手軽に自宅で血圧を測定し、自分の血圧管理をすることができるようになりました。今回は、この家庭血圧測定において、注意すべき点や家庭血圧測定でこそできるようになった、診療上のメリットについてお話します。

なぜ、家庭血圧を測定するといいの?

血圧は、いつも変動しているものです。非常に腹が立って、あるいはイライラしていると血圧は上がるだろうということは、誰でもわかることです。高血圧の治療をしている医師側でも、家庭血圧測定器ができる前は、いつも変動している血圧を、1ヶ月か2ヶ月に1回受診する患者さんの、診察室で測定した血圧の値を頼りにして、治療薬を投与していたわけです。白衣現象といって、医師が診察室で血圧を測定すると、本来の血圧より高くなってしまう現象や、一日の中で時間によって血圧がかなり変動してしまう患者さんもありますから、毎日、自分の家で手軽に血圧を測定して、その記録を診察の時に持ってきてもらえば、診察室だけでの測定より遥かに多くの情報が得られるため、適切な治療に繋がると考えられます。現に家庭血圧値は診察室血圧値より優れた生命予後の予知因子であると報告されています。

どんな家庭血圧計を買えばいいの?

現在は、どんな薬局やデパートへ行っても家庭血圧計は売っていますし、腕時計にも血圧計が付いているものもあります。しかし、加圧により正確に動脈が圧迫されるか否かなどの点で、上腕カフ法(肘関節の上にカフを巻いて送気して加圧する方式)のもの以外は精度が低く、家庭血圧を測定して医療に役立てるという点からは、上腕カフ法による家庭血圧計を購入すべきです。

家庭血圧はどのように測るの?

購入した家庭血圧計についている、カフの巻き方の説明を良く読んでください。大体は、カフ自体に色のついた印があり、その部を腕のどの部分に一致するように巻くように指示してあると思います。いろいろな測定条件を示している先生がありますが、私が高血圧治療をしている患者さんに勧めている家庭血圧の測定条件は、

朝:起床30分以内

座位、排尿後、1~2分の安静後、服薬前、朝食前1回だけ測定する。必ず、記録する。

夜:就寝直前

座位、1~2分安静後、1回だけ測定する。必ず、記録する。(入浴、飲酒などが影響すると思われるが、とにかく測定する。) 血圧測定は、複数回測定すると、記録するのは、どうしても低かった方の血圧を記録したくなりますし、例えば3回測定してその平均をとるなどとすると、測定すること自体が面倒になりますから、1回だけ測定して記録してもらうことにしています。

どの位の家庭血圧だったら、良いコントロール状態なのですか?

これまで、高血圧の診療基準は幾つも提案されてきていますが、家庭血圧に基づく高血圧の診療基準はありませんでした。家庭で血圧を測定して診療の目安にするという考え方がなかったので当然のことです。従って、これまで提案されてきた殆どすべての高血圧の診療基準は、診察室での血圧を基にした診療基準です。ただ、岩手県の大迫町での家庭血圧についての研究は世界的にも認められたもので、その結果が日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2000年版(JSH2000)」にも取り入れられ、生命予後に準拠した基準値として135/80 mmHgが高血圧の基準値になるとしています。また、「米国第7次合同委員会(JNC7)」の報告(2003年)では、自己血圧測定(家庭血圧値)が135/85 mmHg以上は一般的に高血圧と考えるべきだとしています。一般に、家庭血圧値は診察室血圧値より低い値を示しますので、このように診察室での血圧値に基づいた従来の高血圧の基準値より低い値なのでしょう。
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