介護老人保健施設長 :宮崎 青爾
松波総合病院
介護老人保健施設長
宮崎 青爾
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介護老人保健施設は、心身に障害があり、自宅での療養が困難で介護を必要とされる方がお過ごしいただく施設です。ここでは利用者の家庭復帰、社会復帰を目標に、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、介護福祉士などの専門スタッフが力を合わせ、利用者に応じた医療、看護や介護、リハビリテーションを提供して、病院とご自宅とをつなぐ役割を果たしています。そこで、当施設での主な取り組みを、2回に分けてご紹介します。
認知症になっても、心は生きている。
厚生労働省の推計によると、介護を必要とする認知症の高齢者の数は全国で300万人を突破し、65歳以上の人口の1割を占めることがわかりました。当施設でも常時140人ほどの方が入所されていますが、その1/3以上が認知症のある方です。
以前は、認知症を「何もわからなくなった人」と見なし、食事や入浴などの介護はケアをする側の都合優先で進めていました。また、徘徊や攻撃的行為、妄想などの行動はケアを困難にさせるものと考え、その症状や行動をいかに抑えていくかがケアの中心になっていました。しかし最近では、「認知症に伴う行動異常は何かを伝えようとするメッセージ」と受け止められるようになり、「そのメッセージを理解しようとする努力からケアの第一歩が始まる」と考えられるようになりました。それが「その人らしさを大切にするケア、”パーソン・センタード・ケア”」です。
“パーソン・センタード・ケア”とは?
認知症の方とスタッフがお互
いにわかり合い、尊重しあう
ことを大事にしています。
“パーソン・センタード・ケア”は、英国の心理学者トム・キットウッドが提唱した認知症ケアの考え方で、認知症であってもその人の個性や人生を尊重し、その人の視点や立場に立ってケアを行おうというもの。認知症の人たちとそのご家族、私たちスタッフの交流の中でその人の生きてきた歴史や人間関係などの情報を集め、分析していく中で、適切なケアを見つけていきます。アプローチの仕方は一人ひとり違うので、手間も時間もかかりますが、それが正しい答えを導くための早道なのです。
本人の想いや困難に寄り添うケア。
ひとつ具体例をあげてみましょう。ある認知症の女性には、大声でわめきながら廊下を歩く症状がありました。職員が言動を観察したところ、「○○ちゃん」と言っていることがわかりました。○○ちゃんって誰、ということになりご家族に聞いてみたところ、お孫さんの名前だと言われました。そのお孫さんは時々面会に来るのですが、その後が症状がひどくなることがわかりました。そこで、お孫さんが次にいつ来るかを壁に書いてあげたら、徘徊も大声を出すこともなくなりました。職員が「もうじき○○ちゃんが来るね」と言うとニコっとされ、お孫さんが来る日は朝早くから玄関で待っておられます。
共感力と想像力を総動員して、利用者の笑顔を取り戻したい。
“パーソン・センタード・ケア”は、認知症の方だけでなく、当施設の利用者すべてに共通する理念です。その人にとって楽しいことを見つけてあげる。ゆっくりと話しかけ、怒りが静まることをやってあげる。家族との関係をどうしたらいいかを考えるなど、その人らしさを大切にするケアで、自分らしさを取り戻し、本人にもご家族にも笑顔が生まれます。簡単なことではありませんが、私たち職員も、共感力と想像力をフルに働かせて、誰もがその人らしく暮らせる施設づくりを進めていきたいと思っています。
介護老人保健施設でのイベント
- クリスマス会
- ミニコンサート
- 家族介護教室
(介護老人保健施設で提供しているお食事の試食会)