変形性関節症とは外傷や加齢が原因となり関節軟骨がすり減ったり、なくなったりして関節が変形し、痛みや腫れをきたす状態です。四肢の関節にはどこでも起こりうる病気ですが、特に股関節や膝関節など、下肢の荷重を受ける関節に変形が起こりやすく、また荷重関節に変形や痛みを生じると、歩行や立ち座り動作が困難になります。
現在変形性膝関節症の患者数は自覚症状を有する患者数で約1,000万人、変形のみで痛みを自覚していない患者数を含めると約3,000万人と推定されています。高齢化が進む社会で、患者数は年々増加しています。多くは50歳以後に発症し、性別では女性が男性の4~5倍多く起こるといわれています。
初期には朝の起床時や腰掛けた後の動き始め、歩き始めになんとなく膝がこわばる、鈍く痛むといった症状からはじまり、徐々に立ち上がりや坂道、しゃがみ込み、正座などといった膝に力がかかる動作で痛みを感じるようになります。進行すると通常の歩行でも痛むようになり、日常生活に支障をきたすようになりますが、通常病状の進行自体は比較的ゆっくりで、数年から十数年かけて徐々に変形や疼痛がすすむことが多いといわれています。
治療法としてはまず自身でできることとして減量や筋力トレーニングがあります。膝にかかる負担は歩行時で体重の約2~3倍、階段昇降時には約4倍、走るときには約6倍近くになるといわれ、体重を減らすことで膝にかかる負担を減らすことは非常に重要です。また筋力トレーニングは膝を支える筋肉を鍛えることにより、軟骨がすり減って不安定になった膝を安定化する効果があります。具体的なトレーニングとしては椅子に腰かけた状態で膝を伸ばしたり、寝ている状態で脚を持ち上げるといった、膝に負担をかけずに行える運動がよいとされています。また水中での運動も膝にかかる負担が少なく、消費するエネルギーも増えてダイエットにも効果的です。
こういった努力にもかかわらず、痛みが強くなる場合には薬物療法(抗炎症剤の内服や湿布などを使用します)やヒアルロン酸製剤の関節内注射、装具療法が必要となることもあり、さらに日常生活が強く障害される場合には人工関節などの手術治療が必要となることもあります。
関節に痛みがなく、快適な日常生活を送ることができるように、普段から予防していくことは大切です。また痛みを感じた場合はあまり我慢をせず、早めに医療機関に相談しましょう。