われわれ日本人をはじめ、中国人、韓国人などいわゆる東アジア人には一重まぶたの人が大勢います。むしろくっきりした二重まぶたの人は少なく、男性では10人に1人、女性では3人に1人という報告もあります。
一重と二重のどちらが好みか、人それぞれと思いますが、まぶたの形は個性であってどちらかが正常で、どちらかが異常ということはありません。
と、一般的には考えられていますが、そう言い切れない場合があります。
下の写真は、当科で手術を行った20代男性の術前と術後ですが、目元の印象以外にも変化したものがありました。
【術前】 【術後】(6か月経過)
※顔写真の掲載について、ご本人の承諾を得ております。 ※経過には個人差があります。
施術名 : | 挙筋前転法 |
施術の説明 : | 皮膚に切開加えて眼窩隔膜を翻転し、瞼板全面に固定します。 傷跡は二重のラインに隠れますが、2〜3か月は赤みが残ります。 |
それは、視野です。
左眼 右眼
上の画像は、「ゴールドマン視野検査」と言って、簡単に言うと等高線のような楕円(だえん)がその人の見えている範囲です。この男性では、下段の二重まぶたのときの視野はほぼ正常範囲ですが、一重まぶたのときは楕円の上半分がつぶれています。すなわち、上の方は見えていなかったということです。
ちなみに、眼瞼下垂症(がんけんかすいしょう)の患者さんでも、楕円の上半分がつぶれています(まぶたが下がっているので、当然ですネ)。
つまり、一重まぶたの人は上方の視野が狭いということです。でも、生まれつきなので気づいていない人も多いです。
これは、当科で手術した10代〜20代の一重まぶたの18人、36眼瞼の術前(一重まぶた)、術前でまぶたをテープで持ち上げた状態、術後(二重まぶたになった状態)の3通りで測定した上方視野面積(ゴールドマン視野検査の楕円の上半分の面積)です。術後は、有意に視野が拡大しているのがわかります。ただし、何らかのまぶたの不調を訴えて受診した方が対象なので、世の中の一重まぶたの人が皆、この通りとは限りません。
まぶたをテープで持ち上げた状態でも術後とほぼ同じ値になることから、二重まぶたになるとどのぐらい視野が広がるか、テープで持ち上げることで、簡単なシミュレーションができます。
先ほどの写真の20代男性も美容目的で手術を受けたのではなく、”まぶたの重みを何とかしてほしい”と訴えていました。
眼瞼下垂症に似た症状(まぶたの重みや頭痛、肩こりなど)のある一重まぶたの10代、20代の方にも当科では”挙筋前転法(きょきんぜんてんほう)”を適用して改善を図っています。
挙筋前転法は局所麻酔で行い、両目で1時間程度の手術で日帰りも可能です。
●翌日から洗顔、洗髪ができますが、手術の後しばらくはまぶたの腫れが残ります(1〜2か月ぐらい)。
●内出血でまぶたの所々が一時的に紫色になることもあります(1〜2週間ぐらい)。
先ほどの男性の術後写真は6ヶ月経過したときのものです。
他にもリスクとしては、ドライアイや角膜表層の障害を生じる可能性、乱視の程度が変化する可能性などがあります。
健康保険適応の費用は3割負担です。
正面を向いている時にまぶたの縁が瞳孔にかかっているなど、眼瞼下垂症の基準に当てはまれば健康保険の適応になりますが、該当しないが手術を希望するという方は自費での治療となります。
実費の場合、およそ15,000円になります。
文責:形成外科 北澤 健
※英文論文(PubMed Central 「Impact of Single Eyelid on Superior Visual Field」)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8929297/
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